最終更新日 2026年7月20日
こんにちは、矢島です。
ひとのことでは、「わたし」らしく、笑顔でイキイキと過ごせるための学びの情報を発信しています。
早速ですが、みなさんは毎日の仕事の中で、「こんなこと質問したら怒られるかな」「ちょっと違う意見だけど、言わないでおこう」と、自分の気持ちをグッと飲み込んでしまった経験はありませんか?
最近のニュースでも、職場のコミュニケーション不足や、若手社員がやりがいを見失って早期に離職してしまう問題が連日のように報じられています。給与や勤務時間といった「条件」だけでなく、職場の「空気感」がいかに働く人の心を左右するかが、いま改めて問われています。
そんな中、ビジネスの世界だけでなく、医療やケアの現場でもいま猛烈に注目されているキーワードがあります。
それが「心理的安全性」です。
「あ、それ聞いたことある!」という方も多いかもしれません。でも、言葉は知っていても、「じゃあ、どうやって作ればいいの?」と悩む管理職の方は本当にたくさんいます。
今回は、2025年に発表されたばかりの研究論文『若手理学療法士の心理的安全性と働く意欲に関する基礎研究』のデータを見ながら、若手がイキイキと働き、ストレスに潰されないための「職場の空気のつくり方」について、みなさんと一緒に考えていきたいと思います!
そもそも「心理的安全性」って、ぬるま湯のこと?

最初に、よくある誤解について考えてみましょう。
「心理的安全性」と聞くと、「みんなが仲良しで、ミスをしても怒られなくて、プレッシャーのない楽な職場」を思い浮かべる人がいます。
でも、それは大きな間違いです。
この言葉を最初に提唱した組織心理学者のシャインらは、
「個人の暫定的な試みを奨励し、報復や罪悪感なしに失敗を許容する風土」が必要だと言いました。
さらに、この概念を広めたハーバードビジネススクールのエドモンドソン教授は、
「チーム内で、対人関係上のリスクを取ったとしても、安心できるという共通の信念」と定義しています。
つまり、「これを言ったら嫌われるかも」「バカにされるかも」という恐怖心がなく、お互いに率直な意見や質問、新しいアイデアをぶつけ合える状態のこと。
決して「ぬるま湯」ではなく、むしろ「お互いに高い目標へ向かって本音で挑戦できる、最高に独創的でたくましい環境」のことなのです。
あのGoogle社が「生産性の高いチームに共通する一番重要な要素はこれだ!」と発表したことで、世界中に一気に広まりました。
理学療法士の世界から見えてきた、切実な「若手の本音」

今回ご紹介する論文では、就職して5年目以下の「若手理学療法士」116名を対象にアンケートを行い、さらにその中から29名にじっくりインタビューをして「本音」を調査しています。
医療やリハビリの現場って、患者さんの命や健康を預かる場所ですから、ピリピリした緊張感がありますよね。若手のみなさんは、専門職としてのプライドを持ちつつも、日々の業務の中で心理的・感情的な大きな負荷を抱え、実は燃え尽き症候群に陥りやすいことが指摘されているのです。
この研究のアンケート結果から、驚くほどハッキリとした「2つの事実」が浮かび上がりました。
① 心理的安全性が高いほど、「働く意欲」が爆上がりする!
調査では、心理的安全性と「働く意欲」の間に、きれいな正の相関関係が見られました。職場が安心できる場所であればあるほど、若手は「もっと学びたい!」「この仕事に熱中したい!」と活力をみなぎらせるのです。
② 心理的安全性が高いほど、「ストレス」がグッと下がる!
逆に、心理的安全性と「職業性ストレス」の間には、強い負の相関関係がありました。つまり、職場の風通しが良くなればなるほど、若手が抱える心身のストレスや不安、抑うつ感は目に見えて減っていくということです。
これって、理学療法士の世界だけじゃなく、一般の企業やどんな職場でも完全に同じことが言えますよね。
若手の「やる気が出ない…」「すぐ辞めちゃう…」「メンタル不調になっちゃった…」という問題の背景には、個人の根性の問題ではなく、「職場の心理的安全性の低さ」がダイレクトに影響している可能性が高いのです。
心理的安全性を生み出す「5つのカギ」

では、どうすれば私たちの職場にこの「心理的安全性」を育てることができるのでしょうか?
論文のインタビュー調査から、職場風土を作るための「5つのカテゴリ(影響を与える要因)」が明らかになりました。ここがこのコラムの一番大切なポイントです!分かりやすく整理して解説しますね。
カギその1:〈ミッション、ビジョン〉 〜すべての出発点〜
職場に共通の目標やルール、そして「所属長の方針」が明確にあることが大前提です。「私たちは何のためにこの仕事をしているのか」というビジョンが共有されていると、たとえ途中で意見の食い違いや対立が起きても、「患者さんのため」「目的のため」に前向きに話し合うことができます。
リーダーが「失敗は悪いことじゃない、チャレンジの結果だ」という明確な方針を示し続けることが、若手の恐怖心を消し去る第一歩になります。
カギその2:〈業務内容とシステム〉 〜仕組みで解決する〜
「心理的安全性は、個人の性格や優しさで作るもの」と思っていませんか?実は違います。「仕組み」を変えることがめちゃくちゃ効果的なのです。
教育・相談システム: 定期的に質問や事例相談ができる時間が仕組みとして組み込まれていると、若手は遠慮せずに先輩の知恵を借りられます。
業務の忙しさのコントロール: 先輩たちがみんな忙しそうにピリピリしていると、若手は話しかけられません。人員を適切に配置し、時間的な余裕を作ることで、初めて「すいません、ちょっと教えてください」というコミュニケーションが生まれます。
カギその3:〈他者との関わり〉 〜上司からのポジティブフィードバック〜
若手の心を開くのは、やっぱり周囲の人の関わり方です。
特に重要なのが「上司からのアプローチ」。上司の側から「最近どう?」と積極的に声をかけるだけで、話しかけやすい雰囲気が一気に作られます。
また、若手がミスやヒヤリハットを報告したときに、「報告してくれてありがとう。他のメンバーへの共有としてすごく意味があるよ」と、責めずに受け入れるフィードバックができるかどうか。荒削りな意見でも否定せず、「そういう考え方もあるね、じゃあこうしてみたら?」とアドバイスを添える。この上司の「フォローやヘルプ」が、若手の「意見を言っても大丈夫だ」という自信を育てます。
もちろん、同期や歳の近い同僚からの「一緒にがんばろう!」という声かけも、ものすごい安心感になります。
カギその4:〈個人の特性〉 〜若手が抱える不安を理解する〜
若手社員は、知識もスキルもまだまだ浅い状態です。そのため、心の中では「こんな自分が意見を言っていいのかな…」という【対人関係不安】や、「自分の能力で貢献できているのだろうか…」という【自己効力感の低さ】を常に抱えています。
一方で、「早く一人前になりたい!」という高いモチベーションや挑戦への意欲も秘めています。
だからこそ、周囲のサポートによってリスクをカバーしつつ、ある程度の「自由な裁量(任せること)」を与える。すると、ストレスが減り、やる気がグンとアップするのです。
カギその5:〈共感〉 〜すべての土台となる温かい眼差し〜
これらすべての要因の背景にあるのが「共感」という枠組みです。
立場の差はあれるけれども、ひとりの人間として「互いの意見を尊重する」こと。そして「自分とは違う考え方や価値観、新しい視点」を理解しようとすること。
若手が新しいことに挑戦して上手くいかなかったとき、感情的に怒るのではなく、「なるほど、こういう意図でトライしてみたのだね。今回はエラーになっちゃったけど、その挑戦は素晴らしいよ」と理解を示す環境。この「共感」のベースがあって初めて、心理的安全性は本物になります。
明日から、私たちの職場でできること

ニュースで語られるような「冷え切ったコミュニケーション」や「若手の早期離職」を防ぐヒントが、この5つのカギにぎっしり詰まっていましたね。
この研究データは、単に「優しくしよう」という精神論ではなく、組織の目標(ミッション)から始まり、評価や教育の仕組みを整え、上司が否定しないフィードバックを徹底し、お互いの価値観に「共感」するという、きわめて具体的で実践的なマネジメントのプロセスを教えてくれています。
もし、あなたの職場が少しピリピリしているなと感じたら、まずは明日から次の3つのアクションを試してみませんか?
- 上司や先輩の側から、毎日1回、笑顔で雑談の声をかけてみる。
- 若手が質問や相談をしてきたら、作業の手を止めて「聞いてるよ」のサインを出す。
- ミスや拙い意見が出たとき、第一声で否定せず、「その視点は面白いね」「報告してくれて助かるよ」と受け止める。
心理的安全性は、一朝一夕には作れません。
でも、小さな「共感」と「仕組み」の積み重ねが、やがてチーム全員の働く意欲を呼び覚まし、最高のパフォーマンスを発揮する強い組織を作っていくはずです。
誰もが安心して本音を語り、お互いにエールを送り合える。そんな温かい職場の空気を、私たちの手で一歩ずつ、作っていきましょう!
あとがき
もしこの記事を読んで、
「職場で本音が言えない」
「上司や部下との関係に悩んでいる」
「つい自分を責めてしまう」
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女性管理職の方を中心に、「どんな自分でも大丈夫」と思える心の整え方や、安心して対話できる関係づくりについてお伝えしています。
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