美術館は自分と向き合い、心が豊かになれる大切な場所
最終更新日 2021年4月28日
最近、美術館には行きましたでしょうか?
新型コロナの影響で足が遠のいてしまった方も多いかもしれませんが、美術館は自分と向き合い、心が豊かになれる大切な場所にもなります。
今では街中で各施設内でもアートが取り入れられることが増えました。
そうした中、美術館でも趣向を凝らした企画が数多く行われ、今ではアートに詳しくない人でも気軽に訪れやすい場所にもなってきています。
それでも
- 絵画のことはわからない
- 詳しくないから楽しめるか不安
- 解説を読んでもわからない
など、楽しみ方やそもそもどう観たらいいのかわからないと思っている人もいるかも知れません。
しかし、大切なことはそもそもアート鑑賞に正しい見方や答えがあるわけではありません。
だからこそ自分に素直になり、心が豊かになれるのです。
今回は、日本でも広まりつつある新しい学びの体験を生む「対話型鑑賞」を例に出しながら、アート鑑賞をおすすめする理由を紹介します。
教育の場で活用されているアートの対話型鑑賞
はじめに近年学校や企業で教育方法の1つとして取り入れられはじめている対話型鑑賞について、説明していきたいと思います。
対話型鑑賞とは、1980年代半ばにアメリカのニューヨーク近代美術館(MoMA)で開発されたアートの鑑賞法です。英語ではVTS(Visual Thinking Strategies)と呼ばれ、当初は子供向けの鑑賞法としてアナウンスされていました。
アート鑑賞における対話型鑑賞の特徴は、美術の知識をもとにするのではなく、その場で抱いた感想や想像をベースに対話を行うところにあります。つまり、作品の背景や技法、作者の生涯といった情報を抜きに、作品に向き合うのです。
具体的には、ファシリテーターによる問いかけに対して各参加者は絵を見て感じた思いをグループで共有し、その対話を通じて観賞を深めていきます。
対話型鑑賞ではこのようなコミュニケーションによって、想像力や考える力、伝える力、話を聞く力を伸ばすことができるといわれています。
自由な解釈を受け入れる
対話型鑑賞のポイントは、答えのない問いかけを行うというアプローチです。
つまり作品に対して自由な解釈を行うことが、自分の感情に気づくことにつながります。
既に社会に出ている方の多くは、詰め込み型の暗記中心の教育を受けてきたのではないでしょうか。その結果、アートに対しても答えを求めがちです。
具体的には、作品を見る前にタイトルや解説を読んでしまう。そして、答え合わせをするように作品を鑑賞していませんか。それでは鑑賞ではなく、確認作業となってしまいます。
繰り返しますが、アートの解釈には、正解がないことをまずは認識することが大切です。
というのも作者でさえ、書いた絵を言語化できないと言う方は多くおり、実際に解説文をくださいと言われて、書くことの方が難しいとおっしゃる方もいるほどです。
美術館で行う自分への簡単な問いかけ
それでも具体的にどうしたらいいのか分からないと迷う方もいるかもしれません。
そこで、取り組み方に関しても対話型鑑賞の進め方を参考にしましょう。
たとえば、冒頭で紹介したVTS(Visual Thinking Strategies)では、進行役(ファシリテーター)が鑑賞者(子供たち)にする質問は下記の3つに限定していると言われいます。
- この絵の中で、どんなことがおこっていますか?
- あなたは、何を見てそう言っているのですか?
- もっと発見はありますか?
著書によれば、VTS(Visual Thinking Strategies)の共同開発者である認知心理学者のアビゲイル・ハウゼンの研究をもとに絞り込んだ究極の形の質問とのことです。
※興味のある方は書籍を読んでみてください。
と、言われても質問自体の抽象度が高いため少し難しい印象を受ける知れませんし、すべての作品に対して問いかけていたら切りがないでしょう。
そこで1人で鑑賞する際は、美術館を歩き回りながら、なんとなく気になる絵かあれば立ち止まり、「何で気になったのかな?」と自分に問いかけをしてみてください。
(気になる絵が全くないということがあれば、それも一つの解釈です。)
もっとシンプルに「好きか?嫌いか?とその理由」を問いかけてもよいでしょう。
それだけでも自分の考えや視点がしっかり持てるようになっていきます。
美術館で感性を磨き、視野を広げよう
悩んでいる時というのは、気づかないうちに視野が狭くなりがちで、どんどん自分のことを追い込んでしまいます。こうした状態になると、相手の意見に耳を傾けることが難しくなってしまったり、自分の意見を押し付けたりということを無意識でもしてしまうものです。
同様に人は歳を重ねるほど、これまでの経験という自らの視点でのみ物事を考えるようになっていき、結果として視野が狭くなってしまいがちです。
つまり「普段と違うことを考える」「新たな視点にふれる」ようなことをしないと感性は鈍っていきます。何よりそうした時間がないとまた人生の幅が広がらないのではないでしょうか。
だからこそ時には「美術館」をきっかけに、いろんな視点に触れることで自らの感性を磨く時間が大切となります。
はじめのうちは、答えがない鑑賞をすることに慣れないかも知れません。けどそれが正解なのです。
気づけば自分の好きな絵、嫌いな絵というものがわかってきて、その理由もはっきりわかるようになります。それがあなたの個性なのですから、自信を持ってください。
それでも一人で美術館に行くのはちょっと・・・という方は、対話型鑑賞会を探して参加して見るのも良いかも知れません。作品の背景や技法、作者の生涯といった情報を抜きに、作品に向き合う会ですから特に準備も必要ありません。
きっとその場では、参加者同士の色んな視点に触れ合えることもとても有意義な時間になることでしょう。
それでは、美術館で自分と向き合う素敵な時間をお過ごしください。
参考サイト
「自分を知ること」についてもっと学びたい方へ
自分のこと・自分の価値観を知りたい方、周りに流されずに自分の意志で行動できるようになりたい方に向けて方法論を含む記事のまとめを作成しました。是非参考にしてみてください。